タクシン派タイ貢献党(Pheu Thai Party)を中核とするタイの連立政権内部のタイ誇り党(Bhumjaithai Party)が、カジノを核とした複合エンターテインメント施設(Entertainment Complex)の開設には重大な懸念があるとし、法案(いわゆる Entertainment Complex Bill)に反対を表明した。14日、複数のメディアが報じた。

8月13日の連立政権での会合でカジノ合法化について議論がなされた後、タイ誇り党のチャイチャノック・チドチョブ(Chaichanok Chidchob)幹事長は、党の意見としてカジノ施設を開設することについての4つの重大な懸念事項を示したと述べた。〔注〕タイ誇り党は、2023年8月にタイ貢献党(党首はタクシン氏の娘のペートンタン・チナワット氏)の要請に応じて、タイ貢献党率いる連立政権に参加。

4つの重大な懸念事項は下記の4点。

  • 第一に、違法ギャンブルの問題は解決されず、新たな合法セクターとアンダーグラウンドのグレー産業の両方において、ギャンブル問題をさらに引き起こす可能性がある。
  • 第二に、国や公的財源にもたらされるとされる利益は、その投資レベルを正当化するものではない。
  • 第三に、観光を促進するためにカジノを利用することは、全国各地に有名な観光スポットが存在することを考えると、不必要である。
  • 第四に、統合型リゾートにおいて、タイ人労働者がどのように雇用を確保するのか、法案には明記されていない。

タイで最も長い歴史を誇る政党で、反タクシン派の立場を取る野党・民主党(Democrat Party)は、かねてよりカジノ合法化に反対の立場だ。チャイチャナ・デトデチョ(Chaichana Detdecho)副幹事長は、タイがマカオ、ベトナム、シンガポールのようなギャンブルの中心地の成功を模倣できるかどうか疑問視し、「党として法案に同意しない」と述べた。その一方で、昔から存在する非合法宝くじを合法化し、課税することで国家歳入を増やすことができると提案している。

タイ財務省はカジノを核とした複合エンターテインメント施設を開設するための法律の草案をすでに作り終えたと言われている。法案は公聴会を経て、国民の意見とともに内閣に提出され審議される予定。
財務省は、観光産業は国に大きな収入をもたらしており、娯楽産業は観光客の支出をさらに増やすことができると主張しており、法案には、「標準的な要件を満たす総合エンターテイメント施設を促進し、規制することは、国内投資を奨励する重要な措置であり、ひいては国の利益となり、持続可能な観光を支援する一助となる」と記されている。

カジノ施設は21歳以上が入場可能だが、タイ人には5,000バーツ(約2万円)の入場料を課す。
また、複合エンターテインメント施設は、下記施設・機能のうち少なくとも4つを有しなければならない。:デパートメントストア、ホテル、バー、レストラン/ナイトクラブ、スポーツ施設、ヨットもしくはセイリングクラブ、スイミングプール/ウォーターパーク、アミューズメントパーク、タイの文化や物産品のショーケース施設、その他監督機関が要求する施設。