text by 日野孝次朗(株式会社 のぞみ総研・のぞみ合同事務所 行政書士)

社内の相談窓口が信用できない社員は内部告発を選択する

ハラスメントトラブルのニュース報道がこの数年で爆発的に増えています。ハラスメント対策は法律で全事業者に対して義務付けられており、社内でのハラスメント相談窓口の設置もその義務に含まれています。しかし、社内に相談窓口が存在していても、相談内容がハラスメント加害者等に漏洩して被害者が嫌がらせや攻撃を受け、それが原因で自殺するといった結果に至るケースも出ています。

社内の相談窓口が信用できないのであれば、外部機関に相談するか、転職するか、我慢するしかありません。ではもし、社員が外部の機関に相談するとして、どういったところに相談するでしょうか。労働基準監督署、弁護士などいろいろありえますが、どこに相談したところで、会社を敵に回す未来が待っているでしょう。

会社との対立関係が明らかになったときに社員が考えること。それが内部告発です。自分が勤めている会社の不祥事や法令違反を探し出し、マスコミや行政機関などに情報提供する。世間を騒がせている不祥事の背景には、多くの場合、内部告発というきっかけが存在しているのです。
会社の中の法的な弱点は、どこの業界でも探せばそれなりにあるものです。しかし、特に上場企業でない場合、法令違反がただちに経営上の致命的なダメージに至るケースは稀です。

内部告発によって全店営業許可取消しとなる可能性さえある

では、パチンコ店営業の場合はどうなのか。おそらく、気になる問題点が思い浮かぶのではないでしょうか。その内容によっては、内部告発によって全店営業許可取消しとなる可能性さえあるのです。ここでそのリスクの中身についてはあえて触れませんが、経営上のダメージを回避する最優先の対策は<内部告発の予防>ということになります。

では、内部告発を予防するためには何をすればよいのでしょうか。そもそも、社員にとって内部告発はできればやりたくないことです。内部告発は一緒に働いてきた仲間たちを裏切ることですから、これに踏み切るのはよほど会社を深く恨むような出来事があった場合です。

  • 上司や経営者からパワハラを受けた。
  • 弁解も聞かれず会社から一方的に責任をなすりつけられた。

こういったことを我慢しているうちに、やがて我慢の限界に達し、会社を退職する決意を固めます。そして会社や上司に対する復讐心が沸き上がって内部告発を思いついてしまうのです。
つまり、社員が復讐心を抱く前に不満を探知しその不満を解消できれば、内部告発を回避できるということです。社員の本音を把握するために、ES調査などの従業員サーベイ、社員面談、相談窓口、ホットラインの設置などを行う必要がありますが、これだけでは問題は解決しません。こうした方法で社員の不満を探知したとしても、そのあとで会社としてどのように対応するか、という難しい課題が残っているからです。

  • ハラスメントの加害者に注意を促す。
  • 改善できなければ不利益人事で処罰する。

これが多くの企業でよく行われている一般的な対応法です。
しかし、パチンコ店営業のように法的リスクが致命的に重大な場合は、こういった対応はかえって危険です。その理由と対策法については続編で解説します。

のぞみ総研では、ホール企業の風営法務とハラスメント対策の支援サービスを提供しております。外部相談窓口サービス・コンプライアンス研修・コミュニケーション指導・トラブル円満解決など、詳しくは以下へお問い合わせください。

日野孝次朗
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