タイでのカジノ合法化を目指す新たな法案が、12月3日に開催されたThailand Entertainment Complex Summitの中で、人民党のチュラポン・ユカテ(Chulapong Yukate)議員によって発表された。12月12日に国民議会に提出予定のこの法案の特徴は、「エンターテインメント複合施設(EC)」を中心とした包括的な施設設計が特徴だ。施設内にはショッピングモール、ホテル、レストラン、バー、スポーツスタジアム、そしてカジノが含まれる計画で、国際的な投資を積極的に受け入れる枠組みが盛り込まれている。

法案の概要と特徴

詳細を報じているMACAU BUSINESS . COMによると、 ユカテ議員は「エンターテインメント複合施設の所有者は国籍を問わず、カジノ運営の経験がない場合は専門のカジノ管理会社に委託できる」と説明。また、法案には、外国投資家が通常の「現地51%:外国49%」の出資比率を超えた投資が可能となる特例が明記されている。
エンターテインメント複合施設の運営にはタイ人のディレクターを要さず、外国人がディレクターを務めることも認められる。この説明は、マカオやアジア市場で活躍してきたカジノコンサルタントたちの関心を集めた。

The beach of Pattaya Chonburi Thailand

このほか法案には、現職の首相が委員長を務める「EC政策委員会」の設立が提案されている。また、違法カジノ運営に対する既存の懲役刑は維持しつつ、カジノ法違反には50万バーツ(約145万円)の罰金が科される仕組みを導入。さらに、ギャンブル依存症対策のための支援基金の設立も盛り込まれている。

法案が国会に提出された後は、審議と回答を経て、最終決定は2025年4月12日となる見込み。

国際企業の動向と投資意欲

タイの観光産業への投資に対して、MGM China HoldingsやGalaxy Entertainment Groupといった国際的なカジノ運営企業が関心を示している。マカオを拠点とするMGM Chinaは、タイ市場での新規投資に向けた検討を進めており、パンシー・ホー(Pansy Ho)会長は6月のタイ観光庁のタパニー・キアトファイブール長官との会談でも、タイにおけるエンターテインメント複合施設の可能性を議論した。

カジノ合法化への期待と課題

ユカテ議員は「国際投資の受け入れが不可欠」と述べ、法案がタイ経済と観光産業の発展に寄与するとの見解を示した。一方で、違法ギャンブル問題や投資収益の不確実性を懸念する声も根強い。与党のタイ誇り党は、「違法ギャンブル問題の未解決」「投資利益の不確実性」「観光促進の必要性の欠如」「タイ人労働者の雇用確保」を理由に慎重な姿勢を維持。野党・民主党はカジノ合法化に一貫して反対しており、非合法宝くじの合法化による税収増を代替案として提案している。
タイでのカジノ合法化は、観光産業の収益拡大に寄与する可能性がある一方で、社会的課題や反対派の意見が障壁となっており、今後の議論の行方が注目される。

text by Tanaka Tsuyoshi