text by 日野孝次朗(株式会社 のぞみ総研・のぞみ合同事務所 行政書士)

パチンコ店の店名と不正競争防止法

 原則として事業者は店名を自由に選ぶことができますが、不正競争防止法という法律があり、不正な営業をする目的で他人の商号やサービス名、商品名などを勝手に使用してはならないことになっています。
 たとえば、全国的に有名なパチンコ店があったとして、いかにもそのパチンコ店のチェーン店であるかのような誤解を受けそうな名称やマーク等を無断で使用すると、不正競争防止法に違反する恐れがあります。
 ライバル店の名称をわざと使用することはないとしても、たまたま似たような名前の営業所が同じ地域に出店してしまうというトラブルはありえます。
 また、同業者でなくゲームセンターやボーリング場などの異業種との間で紛争になることもありえます。同じアミューズメント業界なので客が誤認するおそれがあり、不正競争防止法違反に問われる可能性があります。

商標法

 商標法は、商品やサービスで使用する名称やマーク等を保護する制度であり、特許庁での登録によって発生する「商標権」という権利を保護しています。
 この権利は原則として早い者勝ちで取得することができます。
 たとえば、別々の会社が経営する「パーラーのぞみ」というパチンコ店が偶然2店舗あって、A社の方が先にその名称を使っていたけれど、後から同じ名前を使い始めたB社が「パーラーのぞみ」という店名を特許庁で商標登録してしまった場合には、A社の「パーラーのぞみ」という名称がその店舗の名称として特別に認知されている場合(先使用権が認めれる)以外は、B社はA社に対し商標権を行使できます。

 つまり、A社としては「パーラーのぞみ」という名称を使用できなくなってしまい、もし無視して営業し続けた場合には、営業の差し止めや損害賠償請求のほか、刑事罰の対象ともなりえます。
 しかも紛争の相手はパチンコ店だけに限りません。商標権が及ぶ範囲は、その商標を使用する範囲(業種など)と名称に類似する範囲までとなっているからです。

登録商標の調査と管理

 もし今後店名を決定する機会があるときには、商標登録のデータベースで調査し、必要があればあらかじめ商標登録をしておくことをお勧めします。
 商標権の効力は一定の時間が経過すると消滅し、原則として最長10年間存続しますが、期間が経過する前に登録の更新を行う必要があります。
 特許庁から更新期限の通知はありませんので、更新期限は自社で責任をもって管理する必要があります。店名を変更した場合には10日以内に都道府県公安委員会に変更届出と風俗営業許可証の書き換え申請を行う必要があります。

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