「賭金」が何を指しているのか、回答者、調査会社、警察庁は共通認識をもっているのだろうか?

警察庁が公表した「オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託報告書」は、〈ごく一般的な人たち〉の中の約2%、推計197万人がオンラインカジノを現在も遊んでいるとした。その一方で、市場規模の推計値はそのまま受け止めることはできない。理由は2つあり、ひとつは調査対象者の問題。これについては国際カジノ研究所の木曽所長が詳しく説明している。もうひとつは設問ワーディングの問題だ。これを取り上げてみたい。

設問文は、<あなたがオンラインカジノサイトで「有料版」をプレイしている(プレイしていた)時の、1プレイあたりの平均賭額はいくらでしょうか。>と書かれている。

おそらく、それが共有されていない。

オンラインカジノの手軽さは、ランドベースカジノと比較したミニマムbetの低さ。たとえばマカオやシンガポールのランドベースカジノで、テーブルゲームのミニマムbetは日本円にして約5000円。日によってはそのような低レートのテーブルが開いておらず、ミニマムbetが約15000円だったりする。一方、オンラインカジノではバカラのミニマムが0.5米ドル(約70円)と、”カジノ”のイメージとは程遠い低額から遊ぶことができる。

もしも、〈1プレイ〉を、1ゲーム(1ハンド、1回のbet)と捉えていたら、ミニマムbetで遊ぶ利用者の回答は「約70円」となる。だが、調査結果では1プレイあたりの平均額が「500円未満」の利用者はわずか8.6%しかいない。過半数は平均賭額が「5000円以上」だった。過半数が1ゲームごとに5000円以上をbetしているとは考えにくい。

出所:警察庁「オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託報告書」

おそらく、多くの回答者は、1時間なり2時間なり続けて遊んだひと固まりの時間を〈1プレイ〉と認識しているだろうと思う。この場合、〈1プレイあたりの平均賭額〉は、けっこう回答が難しい問いだと思う。

仮に、ずっと1ドル賭けるという遊び方で1時間バカラをやり、その間120ゲームだったとする。この1時間を〈1プレイ〉と定義するのであれば、この間の賭金は1ドル×120ゲーム=120ドル=約17,400円となる。しかし、回答者は〈1プレイ〉の間に何回ベットしたかを、覚えているものだろうか? 1カ月間では何回ベットしたことになるのか? 

そもそも、ずっと同じ額をbetし続けるような遊び方は稀なので、1プレイを通じた1ゲームあたりの平均bet額というのも、かなりあいまいな数字になるだろう。

カジノゲームのbet額は上限が非常に高いので、個々人の差が大きい。また、同じ人であっても、ゲームの流れの中で賭額が10倍になることも珍しくない。これは日用品の消費行動とは相当に異なるので、アンケートから消費金額を推計することは難しい。

出所:警察庁「オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託報告書」

この調査結果には不自然な箇所がある。「1日あたりの平均賭額」として最も多いのは、「5,000円~10,000円未満」(17.6%)で、次いで「10,000円~30,000円未満」(16.8%)だった。

1カ月あたりの平均賭額は、「1プレイあたり平均賭額」×「1カ月あたり平均頻度」になるはずだ。しかし図表41で示された「1カ月あたりの平均賭額」として最も多いのは、「5,000円~10,000円未満」(17.4%)で、次いで「10,000円~30,000円未満」が14.6%であった(上の図)。これではまるで、ほとんどの利用者が1カ月に1回しかオンラインカジノを遊んでいないことになる。これは何かの間違いだろう。