帝国データバンクは、企業概要ファイル「COSMOS2」(147万社収録)の中から、2018 年~2023年の各年において業績が判明している「パチンコホール経営法人」を抽出し、法人数や売上高合計、損益について調査・分析した。

6月19日に公表したレポート『パチンコホール経営法人の実態調査(2023 年)』は、2023年の業界の状況を、「 売り上げは下げ止まりの兆しがあるものの、法人数は大幅減少」「3年ぶりに黒字法人が半数を超えるもコロナ禍前の水準には戻っていない」と結論付けた。

ファン離れについて抜本的な解決には至っていない。

同社はレポートの中で、2023 年の業界を、「パチンコホール運営業者にとって、コロナ禍で悪化した事業環境が改善した1年だった。特に新しくリリースされたスマートパチスロ(スマスロ)のヒットにより、遊技を楽しむファンがホールに戻るなど集客に苦戦していたホールの救世主ともなった。しかし、業界全体からみればコロナ禍で大幅に落ち込んだ来客者数の改善は一部の業者に限られ、ファン離れの傾向について抜本的な解決には至っておらず、業界が抱える大きな課題の一つとして積み残されたまま」と総括。


2023 年は業界で過去最大の倒産<(株)ガイア、民事再生法、負債 943 億 5500 万円>が発生したほか、コロナ禍で赤字に陥り、新台入れ替えなど設備投資資金を賄えず、廃業を決断する業者も散見された。しかし、集客力の回復や事業譲渡などが進み、倒産件数は 24 件(前年は 34 件)と減少に転じた。

2023 年に帝国データバンクにより売り上げが判明したパチンコホール経営法人数は 1336 社。その損益状況を分析した結果、黒字企業の割合が 52.5%だった。コロナ禍の2021 年には約6割の法人が赤字となっていたが、業績は徐々に回復し、3年ぶりに黒字法人が過半数を超えた。

2024年の展望について同レポートは、「2024 年は廃業が増加、淘汰が進む可能性がある。スマスロだけでなくスマパチでも話題の台が多くリリースされるほか、7月に予定されている新紙幣の発行によりホール事業者はサンド(貸出機)識別機の交換、新しいサンドの購入に迫られることになり、多額の設備投資が不可欠となるため、手元資金の有無が業績の明暗を分け、二極化が鮮明となる一年になりそうだ」としている。


また、長年にわたるパチンコ・パチスロ需要の減少によって資金繰りに余裕のあるホール運営法人は少ないことと、ガイアの民事再生を契機として金融機関のなかにはパチンコホールに対する見方をさらに厳しくするといった声もあることから、「新たな資金調達の可否が鍵となりそうだ」と指摘している。